建築家の裏話

建築家の自宅

建築家が自邸を設計するというのは結構シンドイ作業である。なぜか、出題文中では「クライアントがあほだからというエキスキューズがこの場合にはきかない」「設計した当初の昔の自分と顔をつきあわせていくことになる」「他人の家の場合には……縁を切る手段はいくらでもある。自邸はそうはいかない」等のもっともらしい理由をあげた。しかし、もっと簡明かつ高級なメタファーを用いるなら、建築家が自邸を設計するという行為が、一種の「ケーデル問題」だからである。「ケーデル問題」であるゆえにそれはシンドイのである。

ゲーテル問題

「ゲーテル問題」については柄谷行人が彼の評論中で嫌というほど繰り返し繰り返し語っている。柄谷があまりしつこいものだからそれを読んだあの大岡昇平が友人の数学者に「月二回、数学を教えて下さい、月謝払います」との電話をしたと伝えられている)。あるいはアメリカのコンピューター科学者ダグラス・ホッフシュテッターによる「ケーデル・エッシャー・バッハ」(1979年)という著作があり、これはこの種の著作としては驚異的なベストセラーとなって邦訳も出ている。要するに今日では知識人の必須アイテムなわけだが、ここで簡単に復習してみよう。